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再び森鷗外を

 明治四十三年に書かれた『沈黙の塔』を再読。

 象徴的な筆法で同年五月に起きた明治天皇暗殺未遂事件を扱った短編小説ですが、梗概とは別に、あの特殊な時代と陸軍軍医総監という地位に置かれた鷗外の芸術や学問に対する思いが綴られ、今の中国のあり方に重ねて見ることができると思います。

 明治維新という改革開放の熱がすでに冷めた。大逆事件に対する苛酷な処理は、更に鷗外や同時代の文人が抱いた開明的立憲君主制の望みを幻滅へと追いこむ。鷗外の言葉を見よう。


『沈黙の塔』の執筆は、上の写真の十一年後に行われた。



 芸術の認める価値は、因襲を破る処にある。因襲の圏内にうろついている作は凡作である。因襲の目で芸術を見れば、あらゆる芸術が危険に見える……


 学問だって同じ事である。

 学問も因襲を破って進んで行く。一国の一時代の風尚に肘ひじを掣せいせられていては学問は死ぬる……


 なぜというに、どこの国、いつの世でも、新しい道を歩いて行く人の背後には、必ず反動者の群がいて隙を窺うかがっている。そしてある機会に起って迫害を加える。ただ口実だけが国により時代によって変る。


 明治四十三年から時は百十年も経ちました。しかし「どこの国、いつの世でも」という鷗外の指摘は、残念ながら今なお一種の予言のごとき力と暗さを持っている。

 憤りとやるせなさの上に更なる悲しみが重なりました。荘魯迅友の会の二代目会長・今川良太郎氏が逝去されました。会をまとめながら勉学やコンサートライブの実行にお力を注がれ、友人としても絶えずわたくしを支えてくださった良太郎さん、心よりご冥福を申し上げます。

 

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荘魯迅
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