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李白の詩、項羽の歌

わたくしは、和光大学の「中国文学との対話」という講義でも漢詩を語ったりします。必ずしも全作ではなく、むしろ詩人の筆力が凝縮された一句あるいは一聯(上下二句)を取り上げることが多いのです。言ってみれば、作品のエキスになる部分ですね。

だいたい前期に一時限、後期にまた一時限というペースで、こうした名吟のエキスを味わうことに当てています。合わせて二時限だけにもかかわらず、かなりの作品数を取り上げることができます。中でもほぼ毎年プリントに刷り込んでいるのは、李白の「夢に天姥に遊ぶの吟 留別」の結びなのです。

天姥(てんぼ)とは山の名。浙江省天台県の西北に位置し、天台山と相対してそびえ立つ。本作は天宝四(745)載の末、李白が山東の地から南の呉越へ下ろうとした時に詠まれました。人生一回目の参政が挫折して間もない時であったのですが、夢幻と現実とを交錯させ縦横無尽に詠まれた本作は、「想像力と描写力」を余すところなく発揮した、李白全盛期の傑作と看做されてきました。

とはいえ、その結びの二句を吟ずれば、それらはすべて胸中の鬱憤をぶちまけるための伏線に過ぎないということがわかるのです。ご覧ください!

安んぞ能く眉を摧き腰を折って権貴に事え、我をして心顏を開くを得ざらしめんや。

(大意)眉を伏せ腰を屈めながら権力者に仕え、我が心身を苦しめることなぞできるわけがないだろう!

ここより詩仙李太白の何ものにも屈しない気迫が溢れ、大志が果たせない鬱憤が迸り、更に彼ならではの権力に対峙する人間の尊厳への醒覚が閃いている。ただ視点によってはこれを負け犬の遠吠えと嘲笑う人もいるが、『こころ』に収められた「​五松山の下の荀媼の家に宿す」と合わせて読んでいただければ李白の人となりが自ずからお分かりになるだろうと思います。

わたくしは「青天に明月を攬る」太白の超越たるところを愛し、「影に対して三人と成る」という孤高も愛す。何よりも時々、詩中に見られる人に接するその姿勢に敬意を持っております。

江油李白旧居

さて数日をかけて「垓下の歌」の動画を新たに編集しました。2、3年前に若くて優秀な映画監督がMVを作ってくださいましたが、今回YouTubeにアップしたものはただいまのわたくしがそれを歌った時に脳裏を浮かんだ風景となります。ぜひご覧いただきたいです。

https://www.youtube.com/watch?v=IiAvbzp8PHo

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荘魯迅
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