沖縄講演の旅は忘れ難く、詩を以て感懐を述べる
琉球行即事感懷 絕句三首
其一 題李杜講演會
泣鬼驚神歌李杜
催花綠柳舞風雨
百川激濺接青絲
一曲滂沱連碧宇
その一 李杜講演会に題す
鬼を泣かせ神を驚かせて 李杜を歌い
花を催し柳を緑にして 風雨を舞わしむ
百川(ひゃくせん)は激濺(げきせん)として青系に接し
一曲は滂沱(ぼうだ)として 碧宇(へきう)に連なる
注釈:百川=百川 海に帰すと言う熟語があるゆえ、ここで百川を海と解す。
青系=碧海を背景に降ってくる雨が青い系のように見える。
其二 夜遊海灘
朱顏粉黛醉金卮
白浪黃沙摩玉姿
天地溫情澆塊壘
枯榮悲喜貴相知
その二 夜 海灘に遊ぶ
朱顔(しゅがん) 粉黛(ふんたい) 金卮(きんし)に酔い
白浪 黄沙 玉姿(ぎょくし)を摩(な)でる
天地の温情は塊壘(かいらい)を澆(そそ)ぎ
枯栄悲喜(こえいひき)とも 相知(あいし)るを貴(たっと)ぶ
注釈:金卮=金の杯。杯の美称。
塊壘=日頃、胸中に鬱積してきた愁い。
其三 雨中留別
題沖繩海邦岳風會上原會長、伊波副會長、沖繩歷史民俗學者仲里先生、長江会会員新里女士等諸賢雨中深情相送。
雨落玉陵琉槿紅
大鴻搏翼欲騰空
群賢折柳拳拳意
盡在纏綿春浪中
その三 雨中の留別
雨 玉陵(ぎょくりょう)に落ちて 琉槿(りゅうきん) 紅なり
大鴻 翼を搏(はば)たいて空に騰(おど)らんと欲す
群賢 折柳(せつりゅう) 拳拳(けんけん)たる意は
尽(ことごと)く纏綿(てんめん)たる春浪(しゅんろう)の中に在り
注釈:玉陵=那覇市の名所。
琉槿=琉球スミレの一種。わたくしが漢語らしく綴ったもの。
大鴻=飛行機
折柳=古代中国では、離別に臨んで柳の枝を送る風習があった。
折柳とはすなわち送別や相思の意を表す。
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